ボートについて。ドイツはやっぱり?
ドイツはやっぱり、EMPACHER?
ボート関係者でドイツと聞けば、まず頭に思い浮かぶのは “EMPACHER“(=エンパッハー)では無いでしょうか?
EMPACHERとはボート界ではよく見かける金色に輝くドイツ産のボートです。(金色というのは冗談で淡黄色をしています。ただ、皆さん知っていました?ドイツの国旗って上から 黒↓赤↓黄 だと思っている人が多いと思いますが、実は 黒↓赤↓金 なんですよ!)
豆知識はこのあたりにしておいて、やっぱりドイツはドイツだからEMPACHERのボートが多いの?と疑問に思われる人も多いかと思います。
EMPACHERが多い?
答えは “Nein” (=ドイツ語で “いいえ” /ナイン)です。どこの国、チームにも方針やメーカーの好き嫌いがあって、また、ボートを購入するのにあたって1番の障壁となるのがその価格!!
ボートについて詳しくない人のためにも説明すると、ボートにも自動車のように10万円程度の軽の中古車から2000万円を超えるような高級スポーツカーまで存在します。もちろん、2000万を超えるようなボートは存在しませんが、8人乗り(+舵手1人)のエイトでフル装備でオーダーすると55K€=650万~800万円程度します。(対ユーロのレートで大きく価格が変動するのでなんとも言えませんが、これに加えその他諸経費等も必要な場合もあり)
一人乗りシングルスカルでは中国製ボートだと15万円程度から、EMPACHER・ドイツ製やFilippi・イタリア製のボートだと130万~190万ぐらいでしょうか。
シングルスカルなんか特にコスパが悪いと思いませんか?軽自動車は4人も乗れて更に荷物も載せれて、新車で100万円前後。ボートは1人しか乗れず100万円オーバー。ボートはそういう乗り物なのです。
ボート競技はとにかく金がかかる!
上の価格を見てびっくりされた方も多いかと思いますが、なんでそんなに高いのか?なぜなら、ボートはハイテクの最先端工業製品だからです。?ボートの素材は基本的にAIRBUSやBOEINGの最新鋭機でも採用されているカーボンファイバーを使用しています。カーボンファイバーは軽くて固く、飛行機の燃費、ボートでは速く走るためにカーボンファイバーは重要な素材なのです。ただ、このカーボンファイバーは製造にもコストと技術が必要で、更にこのカーボンファイバーが生地状になったものを製造メーカーは樹脂で貼り合わせてボートを整形していくわけですが、この整形にも大変な技術力が必要になるので必然的に価格が高くなっていくのです。
参考にどうぞ→ カーボンファイバーってなんでこんなに高価なの? (外部ページに移動します。)
世界のボート製造トップ2メーカーはユーロ圏に存在するので、輸送費や関税、ユーロ決済なら余計な手数料もかからないので日本で購入するよりは数十万円ほど安くなりますが、それでも高価です。もちろん、個人でボートを購入することは少ないので個人の負担が大きいわけではありませんが、チームはまず、ボートを買わなければ、ボート部として存在できません。特にドイツはプライベートチームがほとんどで、資金源はクラブ員の会費とスポンサー、個人の寄付によって運営されています。日本のチームでは大学や企業と言った母体があり、そこから資金を受けることがほとんだと思うので、贅沢に使えるわけではありませんが、安定していると思います。
つまり、ドイツでもEMPACHERより少し価格の安いFilippi のボートも多く買われています。また、オールを支える部分にあたるリガーもカーボン製とアルミ製があり、アルミ製の方が安いのでクラブチームのボートではアルミウイング製のボートを多く見かける訳です。また、カーボンウインは慎重に扱わなければ割れたり、欠けることがありますが、不特定多数が使うボートクラブではアルミウインの方が強度があるのでそちらのほうが多く導入されている背景もあります。
ジュニアクラスは?
自分のクラブチームには子供とジュニアのクラス(中学生以下)もあるのですが、ジュニアはWinTechやSwift、BBG(ドイツのボートメーカー)をメインに使っています。自分のクラブでは、子供はとにかくたくさん漕いで、仲間と連携や身体を楽しく動かしましょう!そういう感じなので子どもたちには申し訳ないですが、ミドルクラス艇で練習やレースに出てもらっています。
ドイツのナショナルチームは?
ドイツのナショナルチームはほとんどがEMPACHERを使用しています。男子ダブルだけはFilippi のアリアンテを使っているイメージがあります。
ちなみに、ドイツの男子エイトやフォアといえば鮮やかな緑色のボートを思い浮かべると思いますが、あの艇もEMPACHERのボートで、緑色はスポンサーのコーポレートカラーが緑色だからです。ちなみに、あの緑色のボート1艇しか無いと思っていたのですが、ドイツに来てみると何艇かナショナルチームに在籍していて、さすが強豪ドイツのエイトは違うな!って感じさせられました。
ここでは深く解説しませんが、ドイツの男子スウィープチームの拠点はドルトムントでドルトムントに本社を置く、Wilo SEがスポンサー企業です。Wiloは全世界で約7,800人の従業員を抱える産業向けポンプメーカーです。