ドイツのレガッタ -その1
レガッタの様子編
今までローイングネタは基本練習をメインに書いてきましたが、2回に分けて3回に分けてレガッタ、レースについて書いていきます。 -その1ではドイツのレガッタの様子をお伝えしていきます。
ドイツでレースに参加するには
ドイツの大会区分は日本とほぼ同じで、
- ドイツボート協会主管(全国大会。日本だと日本ボート協会主催の大会にあたる)
- 州ボート協会主管(日本だとブロック大会に当たる)
- 地域のボートクラブ主管(基本的に制限が無く誰でも参加できるような大会。日本だと朝日レガッタやお花見レガッタにあたる)
と大きく3つに別れています。基本的に国籍等は関係なく、ドイツボート協会に選手登録している選手であればどの大会でも出ることができます。一部、代表選考を兼ねているレースや州代表等には出れませんが。(これは、日本でも基本的に同じでしょう。)
ドイツに来てはじめてレースに参加したのはKrefelder Ruder-Regatta (=クレーフェルトローイングレガッタ)1000mです。区分としては一番後者のボートクラブが主催の地域の大会です。地域の大会と言っても日本人からするとショボい訳ではなく、小学生から大人までのべ500クルーが出場する中規模なレガッタです。この大会にはシングルスカルとダブルスカルで出場しました。シングルスカルはドイツの漕ぎ方がわからなくても一人なのでなんとかなるのですが、ダブルスカルは合わせるがとても大変で5~6艇中下から2位とかだったと思います。なんで合わせるのが大変なのかってのは “ドイツの漕ぎ方 -その2” で取り上げていますのでそちらをご覧ください。
レースの間隔が山手線並み!!
日本が誇る鉄道網、その中でも東京の中心で時間を気にせず駅に行って次々と来る列車に乗ることができる山手線。ドイツのレガッタではその山手線並みの間隔でボートが次々と発艇していきます。上で書いた大会ではのべ500クルーを2日間でさばかなければいけません。なので、3~4分間隔で次々発艇していきます。上の大会はそこまで一般の観客はいないのですが、見ている方も次々とレースが来るので飽きずに楽しむことができます。選手側はレース間隔が短いのでステッキにつけるのに少しプレッシャーがありますが、前の前のレースが始まる前ぐらいまでにスタート後方に待機させられるので高校生以上のクルーは問題ありません。問題なのは小学生と中学生3~4分の間にコースに進入してステッキにつけて、すぐに『アテンション・プーーー』なのでなかなかうまくステッキにつけれなかったり、風が吹いていると大変です。気がついたらレースが15分とか遅れていますが、そこはあまり気にしないドイツ人。今までも問題なく気にしていないから3~4分間隔を続けているのでしょう。だた、困るのは自分より前のレースでキャンセルが出て、レース時間が数分早まっていることがあること。これにはまじでビビるからヤメてほしい。(まー、めったにあることでは無いので普通は心配しなくても良いのですが笑)このショートスパンのレースプランはドイツ人らしい無駄の無い効率性重視の性格が表れかもしれません。(それが100%良いわけでは無いし突っ込みどころもある。
ちなみに、ローイングに詳しくない人のために言っておくと日本のレース間隔は最短で5分間隔(ほぼ存在しない)最もポピュラーなのが10分間隔、次いで15分間隔、全日本選手権の決勝にあたってはファイナルAとファイナルAの間隔が30分も空きます。(FB→10分→FA→20分→FB→10分→FA)暑い、寒い中レースを見に来てくれている人のことを全く考えていない。NHKの収録の都合があるし、テレビ放送はボートをたくさんの人に知ってもらうためには必要なことなのでしかたが無いのかもしれないけど、5分でも短くして1時間あたりのレース数は増やしてほしいのが個人的な意見です。
レガッタが盛りだくさんで飽きない
さて、ドイツのレガッタの話に戻ります。
さすがはローイングの本場ヨーロッパ。ドイツでもメインシーズンはほぼ毎週末どこかで何らかのレガッタが開催されています。もちろん、すべての選手が毎週のように大会に参加する訳ではなく、選手のレベルやコンディションに合わせて大体2週間に1回のペースで大会にでます。これは日本ではほぼありえないことですよね?自分もこっちに来て初めてメインシーズンを迎えたときはこんなにレースに参加するの?と驚きました。また、いい意味で一つ一つのレースに対する感情と言うか思い入れがなくなりプレッシャーから開放されました。とか言うと、日本で漕いでいたときプレッシャーを感じていたのかということになりますが、日本にいたときからあんまりプレッシャーは感じていませんでしたがっ!表現するのは難しいですが、もっと気軽にレースを楽しむことができるというのがしっくりくる表現でしょうか。そう、2週間に1回のペースでレースがあるということはいくつかのメリットがあります。(デメリットもありますが、メリットのほうが大きい)
- ボートに飽きない
- レースに慣れることができる
- 実力がつく
- ボートが楽しくなる
1.ボートに飽きない
日本でボートを漕いでいると、特に夏の暑い時期練習はきついはずです。
自分が大学生だったときの大まかなレガッタスケジュールはこんな感じです。
4月上旬:三大学レガッタ、中旬:お花見レガッタ、5月下旬:軽量級、(6月:国体県予選及びブロック予選)、8月下旬・9月上旬:全日本大学選手権(=インカレ)、10月上旬:国民体育大会、10月下旬:全日本選手権 ■計≒7±大会
見てもらえると分かると思いますが、概ね1ヶ月に1回しかレースが無いことになります。7月、8月は最も暑い時期なのでレースが少ないのは安全面を考えても良いことでドイツも8月は暑いのでレガッタはありますが、参加しません。
ドイツでは3月に入ると徐々にレースが増えてきます。
3月下旬:ロングレース、4月上旬:ミュンスターレガッタ、中旬:ドイツ選手権(スモールボート)下旬:マンハイムレガッタ、5月中旬:インターナショナルレガッタ、6月上旬インターナショナルレガッタinラッツェブルク、中旬、7月上旬:ドイツ選手権(クルーボート)★前半シーズン終了★ 世界選手権など国代表レースシーズンへ ★9月:後半シーズンスタート★ 9月中旬:クレフェルトレガッタ、10月上旬:州大会、10月中旬:ドイツスプリント選手権(350m) ■計≒10±大会
@ 23. Deutsche Sprintmeisterschaften in Kettwig・Essen
Cite: http://meinruderbild.de/
という感じです。すべての大会を書けていないかもしれませんし、地域やクラブによって差があるのは日本もドイツも同じかもしれませんが、上のリストで比較してみると約3大会差レースに換算すると1大会3~4レースするとして9から12レースもドイツの方が多いことになります。また、ドイツの考え方はワイルドなのでダブルエントリー(たまにトリプルエントリー)も日常茶飯事です。(流石にトリプルはやばいと思うけど笑)そのあたりを考慮するともう少し増えるかもしれません。ちなみに、ドイツはシーズン前半が2000m、シーズン後半1000mレースまたは350mレースになります。
つまり、大会の間隔が狭いので飽きる暇なくボートを漕ぐことができるのです。
2.レースに慣れることができる 3.実力がつく
一緒に書いたほうが分かりやすいので2と3は一緒に書きます。
3月のロングレースから身体をレースモードにしていって4月から本格的なシーズンに突入していきます。シーズンに突入すると、2週間後には次のレースが迫っているので、基本的にレースに向けて調整モードに入るということをやっている暇がありません。ただ、逆の考えで行くと、レースをして2週間後には次のレースなので身体はレースに対応した状況になっています。流石にドイツ選手権(スモールボート)や5月のインターナショナルレガッタはコーチもレースに向けたプランになってきますが、個人的な印象はレースをして成長する。またレースをして成長する。その繰り返しのような感じがします。日本にいるときもレースに十分慣れている気になっていたのですが、『これがレースに慣れているということか』と実感しました。ということは、よく考えてみてください。ヨーロッパの代表選手・クルーはこれだけのレースを経験・体感し世界選手権、ヨーロッパ選手権に出ているのです。もちろん、代表クルーともなると地域の大会には出ませんし、基本的にドイツ選手権・スモールボート(代表選考の対象レース)、インターナショナルレガッタ、それに加えてWorld CUPに出ることになるのですが、インターナショナルレガッタは各国の代表候補や代表が出てくるので大会によってはWorld CUPレベルの大会が行われていると言うことになります。
4.ボートが楽しくなる
ボートをやる上で、スポーツをやる上でやっぱり何か目標というのは大切です。目標があるということでモチベーションの向上に繋がります。ただ、その目標の設定期間が長いとどうなるでしょうか?よっぽどメンタルが強いか、真面目で真剣に毎日トレーニングをすることができる人は別ですが、人間やっぱり楽な方へ行きがちですよね?はたまた、全国でトップに、国の代表に、そして世界で勝とうとしているレベルになると、ダイエットのためとか、健康維持のためにランニングやウエイトトレーニングをしよっというのとはわけが違ってきます。(すみません。ダイエット、健康のために運動している人をバカにしている訳ではないですよ)何事においてもそうだと思いますがいきなり遠くの目標を持ったってその目標が遠すぎると先が見えず気分的にもしんどくなってきます。話をもとに戻すと約2週間間隔でレースをするということは、小さな目標を立てそれを達成する。ステップ・バイ・ステップで最終的に大きな目標を達成することに繋がります。小さな目標でも達成できれば嬉しいですし、結果的にボートをやるのが楽しくなります。
@ 2019 Großboot-DM Hamburg
Cite: http://meinruderbild.de/
ドイツのレガッタはみんなが楽しめるイベント
ドイツのレガッタはみんなが楽しいイベント!日本のレガッタのイメージってどうですか?個人的にはボートを観るためだけに人が集まって、しかもそれはほとんどが両親やOB、OGの関係者で、関係者のなかでわちゃわちゃしているだけに見えます。もちろん、関係者が集まってくれなければ始まらない話ですし、関係者同士で集まることは楽しいのでそれはそれで良いのですが、インカレや全日本の大会を見てください。日本のトップを決める大会ですよ!!日本人とドイツ人とでは国民性や生活様式がもちろん違うところがあるので一概には言えませんが、ボートを知らない人がそこで何かイベントをやっていて人がたくさんいて楽しそうだから行こうかってあの大会を見てなりますか?日本ボート協会の体力では限界なのだと思いますが逆に考えてみてください。(あんまり言うと日本ボート界から干されても困るのでこの辺で笑)レガッタはイベント化と収益化の大チャンスなのです。日本の場合、戸田は団体が多すぎるし、海の森は逆に団体がいない特殊環境かもしれませんが、ドイツ(ヨーロッパ)の場合、主催クラブやその水域で練習しているまたは会場周辺のクラブがテントを出店したり、大抵の場合レストランを自前で持っているのでそこを使って関係者向けの朝食から、一般向けのビールやおつまみ(もちろんソーセージ)、おやつタイム向けのケーキやコーヒーまで販売します。(大きい大会になると外部の屋台を呼ぶこともあります)休日の昼間っからビールを飲みながら友達とコース沿いで盛り上がり、一方はケーキを食べならコーヒーを飲むゆったりとした時間を過ごす、背景にはボートを漕ぐ選手が頑張っている、最高じゃないですか!
飲み物類やソーセージなどの加工品、果物等は仕入れるしかありませんが、ドイツでは販売されているケーキやクッキーの殆どがクラブ会員の自主的な差し入れ(寄付)で会員ボランティアで販売し、その収益をクラブの活動費に当てるといった運用をしています。ワンカット2€前後が標準なので、10カット売ったら20€にもなります。2日間の大会で飲み物(1.5€)とケーキを仮に200セット売ったとしても諸経費を引いても最低600€の収益となります。
お金の話はここらへんにしておいて、とにかくドイツのレガッタ会場には音楽が鳴り響き、実況と映像が流れ、友達とビール飲む人、ケーキを食べる人、そしてボートを漕ぐ人、応援する人たくさんの人が集まって一つの大きなイベントなのです。
これは、ぜひ日本のレガッタでも参考にしてほしいし、するべきだと思います。
いかがでしたでしょうか?今回はドイツのレガッタの様子について書きました。次回-その2では選手目線、レースのプランなど、ローイングに関して深く書いていこうと思います。